何を食べさせればいいのか、という問い
子どもの食事について、保護者からよく聞かれるのは「何を食べさせればいいか」という問いです。
この問いには、たいてい期待が含まれています。背が伸びてほしい、丈夫に育ってほしい、という期待です。
先に、正直なところを書いておきます。特定の食品を食べさせることで身長が伸びる、という関係は確認されていません。この記事は、そういう方法をお伝えするものではありません。
代わりにお伝えしたいのは、成長期の体で何が起きているのかということです。仕組みが分かると、日々の判断の基準が変わってきます。
子どもの骨は、大人の骨と違う

子どもの骨には、大人の骨にはない部分があります。
長い骨の両端近くに、骨が伸びる場所があるとされています。ここで新しい組織がつくられ、それが硬い骨に置き換わっていくことで、骨は長くなっていきます。
この部分は、成長が終わると閉じてなくなるとされています。つまり骨が長くなる時期には限りがあるということになります。
まだやわらかい
子どもの骨は、大人に比べてしなやかで、折れにくい一方で変形しやすいという特徴があるとされています。
また、成長中の部分は負荷に弱いとも言われます。同じ動作を長期間繰り返すことで痛みが出る場合があるのは、こうした事情によると説明されています。
骨は毎日つくり変わっている
骨は、一度できたら変わらないものではありません。
古い骨を壊す働きと、新しい骨をつくる働きが、常に並行して進んでいるとされています。この入れ替わりによって、骨は少しずつ更新され続けています。
子どもの時期は、この入れ替わりのペースが速いとされています。つくる側が壊す側を上回ることで、骨は量を増やしていきます。
大人になると、この差が小さくなっていきます。骨の入れ替わりについては 骨密度と骨質 で詳しく扱っています。
身長について、正直に書いておきたいこと
保護者がもっとも気にされるのは、おそらくここでしょう。
身長には遺伝の影響が大きいとされています。両親の身長から、ある程度の範囲が推測されるという考え方が知られています。
栄養が極端に不足している状態では、成長に影響が出ることがあります。しかし逆は成り立ちません。足りている状態からさらに増やせば伸びる、という関係は確認されていません。
それでも栄養に意味がある理由
では気にしなくてよいのかというと、そうではありません。
栄養の役割は「伸ばすこと」ではなく、持っている条件が満たされる状態を保つことにあります。材料が足りなければ、つくられるものの質に関わります。
また、この時期に蓄えられる骨量は、その後の長い期間に関わるとされています。骨量がもっとも高くなるのは20代とされており、子どもの時期はその出発点をつくる期間にあたります。
身長という見える数字より、こちらのほうが長い目で見れば意味を持つかもしれません。
成長期に必要とされる量
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年代・性別ごとにカルシウムの推奨量が示されています。
注目したいのは、成長期の推奨量が成人より高く設定されている年代があるという点です。骨そのものが大きくなる時期であるため、材料の需要が高まるという理由です。
一方、厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」によると、日本人のカルシウム摂取量は1日平均486mg(男性496mg、女性477mg)で、推奨量を下回る状態が続いています。
出典:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」/「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
年代ごとの考え方については 年代・ライフステージ別に考えるカルシウム摂取 をご覧ください。
牛乳が苦手な場合
カルシウムの話になると牛乳が挙げられますが、飲めない・飲みたくない子どもは珍しくありません。
無理に飲ませることが、食事全体への抵抗につながる場合もあります。
カルシウムを含む食品は、乳製品だけではありません。
- 豆腐、厚揚げ、納豆などの大豆製品
- しらす、ししゃも、桜えびなどの小魚
- 小松菜、チンゲン菜などの緑黄色野菜
- ひじき、わかめなどの海藻
- ごま、アーモンド
- チーズやヨーグルト(牛乳が苦手でも食べられる場合がある)
また、料理に混ぜる形なら食べられるという場合もあります。スープに入れる、混ぜごはんにする、といった工夫が挙げられます。
体質的に乳製品が合わない場合もあります。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
偏食とどう付き合うか
好き嫌いは、多くの子どもに見られるものとされています。
一日単位で完璧を目指すと、食事の時間が緊張したものになります。一週間くらいの幅で眺めて、全体として偏りが大きくないかを見るほうが、続けやすいと言われます。
また、食べられるものは時間とともに変わることが多いとされています。いま食べないものが、一年後には食べられるようになっている場合もあります。
食卓の雰囲気
食事の場が「食べさせる場」になると、食べること自体への抵抗が強まることがあると指摘されています。
体重の増え方や食事量に不安がある場合は、家庭で対処しようとする前に、小児科や自治体の相談窓口にご相談ください。
運動と骨

骨は、負荷がかかることで刺激を受けるとされています。
走る、跳ぶ、ぶら下がる——こうした動きは、骨に対する刺激になると考えられています。特別なトレーニングというより、外で遊ぶことがそのまま該当します。
一方で、同じ動作の繰り返しには注意が必要とされています。成長中の骨は負荷に弱い部分があるためです。
体を動かすときの体の仕組みについては 体を動かすとき、筋肉で起きていること をご覧ください。
外に出ることの別の意味
屋外に出ると、日光を浴びることになります。ビタミンDは皮膚でつくられるとされており、カルシウムの吸収に関わる栄養素です。
ただし紫外線対策とのバランスもあります。日光・ビタミンDとカルシウムの関係 で詳しく扱っています。
睡眠の役割
成長に関わるホルモンは、睡眠中に多く分泌されるとされています。
近年は、子どもの就寝時刻が遅くなる傾向が指摘されています。習い事、宿題、そして画面を見る時間——要因はいくつも重なります。
特定の時刻に寝れば良いという単純な話ではありませんが、必要な睡眠時間が確保されているかは、確認する価値のある点です。
朝起きるのがつらい、日中に眠そうにしている——こうした様子は、睡眠時間を見直す手がかりになるかもしれません。
部活動をしている場合
運動量が増える時期には、必要な栄養素の量も増えます。
エネルギー、たんぱく質、そして骨の材料であるカルシウム。運動によって骨に負荷がかかることは刺激になるとされていますが、材料が足りていることが前提になります。
練習量が多い時期に食事の量が追いついていないと、疲れが抜けない、体調を崩しやすいといった形で現れることがあると言われます。
休むことも必要
毎日高い強度で練習を続けると、修復が追いつかなくなる可能性が指摘されています。休養日は、体が適応するための時間にあたります。
痛みが続く場合、痛む場所をかばって動いている場合は、様子を見るのではなく医療機関にご相談ください。
時期によって、見ておきたい点は変わる
幼児期
食べられるものが増えていく時期です。この時期に大切とされるのは、量よりいろいろな味や食感に触れることだと言われます。
食べる量には日によってむらがあります。一食ごとに気を揉むより、数日単位で眺めるほうが実際に近いようです。
小学生の時期
生活のリズムが整いやすい一方で、活動量が増えて食事量も増えていく時期です。
給食で栄養バランスが確保される日がある一方、休日や長期休暇には偏りが出やすくなります。学校のない日の食事のほうが、実は差が出やすいという指摘があります。
中学生・高校生の時期
身長が大きく伸びる時期にあたり、必要な栄養素の量ももっとも多くなる年代が含まれます。
同時に、部活動、塾、通学時間などで生活が忙しくなり、食事の時間が不規則になりやすい時期でもあります。朝食を抜く、夜遅くに食べる、といった形が出てきます。
また、体型を気にして食事量を減らす子もいます。骨がつくられる時期に材料が不足することの影響は、その場では見えません。
食事量が急に減った、体重が意図せず減っているという場合は、様子を見るより医療機関にご相談ください。
朝食について

朝食を食べない子どもがいることは、以前から指摘されています。
朝食を抜くと、一日に摂れる食事の回数が二回になります。回数が減れば、必要な栄養素を確保できる機会も減ります。一食あたりで補おうとしても、限界があります。
とはいえ、朝は時間がなく、食欲もわきにくいという事情があります。完璧な朝食を目指すと続きません。
たとえば、次のような形でも回数としては成立します。
- ヨーグルトと果物
- おにぎりと味噌汁
- パンと牛乳、チーズ
- 前夜の残りを温めるだけ
大切なのは内容の充実より、食べる習慣が途切れないことだと言われます。
また、朝に食欲がない背景に、夜遅い食事や睡眠不足がある場合もあります。朝だけを見ても解決しないことがあります。
家庭でできる工夫
特別なことをしなくても、日々の食事のなかで積み上げられる部分があります。
一品足すという考え方
献立を作り替えるのは大変ですが、いまの食事に一品足すなら現実的です。
- 汁物に豆腐やわかめを入れる
- ごはんにしらすやごまをかける
- おやつをヨーグルトやチーズにする
- 副菜に小松菜や青菜のおひたしを加える
- 納豆を一パック付ける
一つひとつの量は多くありませんが、毎日の積み重ねとしては差が出ます。
子ども自身に選ばせる
食べさせようとするより、選択肢のなかから選んでもらうほうが、抵抗が少ない場合があります。
買い物に一緒に行く、料理を手伝ってもらう——こうした関わりが、食べることへの関心につながるという指摘もあります。
完璧を目指さない
毎食すべてを整えようとすると、保護者の負担が大きくなります。負担が続かなければ、結局は途切れます。
できる日とできない日があってよい、という前提で組み立てるほうが、長い目で見れば続くと言われます。
よくある質問
牛乳を毎日飲ませたほうがいいですか
飲まなければならないというものではありません。カルシウムを含む食品は他にもあり、複数の食品から少しずつ摂る形でも構わないとされています。
サプリメントを使ってもいいですか
子どものサプリメント利用については、必要かどうかを含めて小児科医にご相談ください。栄養素には摂りすぎに注意が必要なものもあります。
牛乳を飲めば背が伸びますか
そうした関係は確認されていません。身長には遺伝の影響が大きいとされています。栄養は、持っている条件が満たされる状態を保つという役割です。
給食があれば足りていますか
給食は栄養バランスを考えて設計されていますが、一日の必要量すべてをまかなうものではありません。朝食と夕食の内容もあわせて考えることになります。
成長痛と言われましたが大丈夫ですか
痛みの原因はさまざまです。当サイトでは判断をお示しできません。痛みが続く場合や、痛む場所が決まっている場合は、医療機関にご相談ください。
食が細いのですが心配です
体重の増え方や食事量に不安がある場合は、小児科や自治体の相談窓口にご相談ください。家庭で判断するより、実際に見てもらうほうが確実です。
まとめ
子どもの骨には、骨が伸びる場所があり、成長が終わるとその部分は閉じるとされています。骨が長くなる時期には限りがあるということです。
そして骨は、毎日つくり変わっています。子どもの時期はそのペースが速く、つくる側が上回ることで量が増えていきます。
身長については、遺伝の影響が大きいとされています。特定の食品を食べさせれば伸びるという関係は確認されていません。
それでも栄養に意味があるのは、伸ばすためではなく、持っている条件が満たされる状態を保つためです。そしてこの時期に蓄えられる骨量が、その後の長い期間の出発点になります。
食事、運動、睡眠。目新しいことは何もありませんが、成長期に効いてくるのはこの三つだと考えられています。
そして、この時期にもうひとつ意味を持つのは、食べることが嫌な時間にならないということかもしれません。栄養は一日で決まるものではなく、何年も続く習慣として積み上がっていくものです。急いで正解を出そうとするより、続けられる形を探すほうが、結果として遠くまで届くと考えています。
お子さんの体調や成長について気になる点がある場合は、小児科医にご相談ください。
