
オーバーカルシウムイオン
摂取量が不足する日本人への警鐘
命を守るために骨を溶かす── 切実な選択
ゴールデンウィークの帰省で親の背中が小さくなったと感じたり、自分自身の足取りに不安を覚えたり…。
しかし私たちの体内では知らぬ間に、「骨が溶ける」という静かな攻防が繰り広げられています。
今回のお話は決してオーバーじゃないんです。
女優さんが、自身の骨折経験に真正面から向き合っている「骨活」──「5年前、転んで右手首を骨折。2日後のコンサートでは、固定した右手をショールで隠して」骨粗しょう症を予防する《骨活》とは?(婦人公論.jp)。
彼女が痛感したのは、「転ばない」ための注意以上に、身体の根本的な「強さ」の重要性でした。
これまでいくどもお伝えしたように、カルシウムバランスは「骨99%」に対して「細胞・血液などに1%」のカルシムイオンの量を厳密に守っています。
これを「ホメオスタシス(生命維持システム)」といって、生体維持に必要不可欠なことです。
つまり、1%を維持するために「骨の犠牲」を実行していて、これが行き過ぎると骨粗しょう症の要因になるのです。
血中のカルシウムイオン濃度は、常におよそ 8.5〜10.5mg/dLという極めて狭い範囲で厳密にコントロールされています。
- 減少の兆しが出た瞬間: 副甲状腺ホルモン(PTH)が即座に分泌されます。
- 骨の破壊(溶出): ホルモンの指令により、骨芽細胞が骨を溶かしてカルシウムイオンを血液中に放出し、1%の濃度を無理やり「正常値」に戻します。
血液検査で「カルシウム値が正常」であっても、それは
骨を削ってなんとか1%を維持している「綱渡り状態」
である可能性があるのです。
つまり私たちの細胞や血液中にあるわずか「1%」のカルシウムイオンが、少しでも減少気味になると、身体は生命を維持するために、自律的に「骨を溶かして」不足分を補い始めます。
転ぶ以前に、体内では骨の破壊が始まっているのです。
参考リンク:5年前の骨折から《骨活》中の夏樹陽子さん・73歳が、専門医に聞く(婦人公論.jp)

1%の減少が招く、細胞レベルの通信エラー
なぜ、骨を溶かしてまで血液中のカルシウムイオンの量を1%に維持しなければならないのでしょうか。
それはカルシウムイオン(Ca2+)が、単なる骨の材料だけではなく、
・心臓を動かす
・筋肉を収縮させる
・脳の命令を伝える
等のための「電気信号のスイッチ」だからです。
この1%が不安定になり、骨からカルシウムが溶け出し続けると、カルシウム パラドックスという現象が起きます。
カルシウムバランスのとれた本来の1%が清流ならば、減少気味の1%は泥流。
- 骨がスカスカになる(骨粗しょう症予備軍)
- 血液中には、ヘドロのようなカルシウムがあふれる(過剰カルシウムイオン)
この状態では、神経のスイッチが誤作動を起こし、いざという時の踏ん張りが利きません。
カルシウムイオンの血中濃度が、数値として1%を大きく下がることは稀ですが、供給が追いつかず、1%の質(鮮度)が落ちてくると、以下のような反応のバグとして現れます。
- 情報の遅延: 「歩幅が狭くなる」「背筋が丸まる」といった、姿勢制御のインフラが弱体化する。
- 神経の過敏化: ちょっとしたことでイライラする、または手汗や動悸など自律神経の反応が過剰になる。
- 筋肉の誤作動: 足がつりやすくなる、まぶたがピクピクする。
この女優さんが懸念する
「ふとした瞬間の危険」
のサインは、筋肉の問題ではなく、骨を溶かすことで起きた
「情報の伝達ミス」
から生まれているのです。
今回は「ただカルシウムをたくさん食べたらよい」というお話ではなく、「食べた後のカルシウムの体内吸収」という質の話になっています。
いくらたくさんカルシウム摂取の食事をしても、余分なカルシウムは便となって排出されるのですよ。
参考リンク:骨代謝について(一般社団法人 日本骨代謝学会)

