眠っているあいだ、体は休んでいるのか
眠ることは、体のスイッチを切ることだと思われがちです。
しかし実際には、眠っているあいだにも体は多くの仕事をしているとされています。組織の修復、記憶の整理、ホルモンの分泌——起きているあいだにはできない作業が進んでいるという説明です。
このページでは、眠りのあいだに何が起きているのかを整理します。「よく眠る方法」を示す記事ではなく、仕組みを知るための内容です。
睡眠には周期がある

眠りは、一晩を通じて同じ深さで続くわけではありません。
浅い眠りと深い眠りが繰り返され、一定の周期で入れ替わっていくとされています。この周期は一晩に何度か繰り返され、朝が近づくにつれて浅い眠りの割合が増えていくと説明されています。
深い眠りは前半に多く現れるとされ、体の修復に関わる働きはこの時間帯に進むという見方があります。
途中で目が覚めること
夜中に一度目が覚めることは、周期の切り替わりのタイミングで起こりうるとされています。すぐに眠りに戻れるのであれば、それ自体が問題とは限りません。
ただし、目が覚める回数が多い、その後眠れない、日中に強い眠気があるといった状態が続く場合は、後述の受診の目安をご確認ください。
寝返りという仕事
見落とされやすいのが、寝返りの役割です。
人は一晩に何度も寝返りを打つとされています。無意識の動きですが、これには意味があると考えられています。
- 体の同じ部分に圧力が集中し続けることを避ける
- 血流が滞ることを防ぐ
- 布団のなかの温度や湿度を調整する
- 関節や筋肉の位置を変える
つまり眠っているあいだも、姿勢は変わり続けているほうが自然ということになります。
寝返りが打ちにくい条件
寝具が体に沈み込みすぎる、寝床が狭い、掛け布団が重い——こうした条件では、寝返りが打ちにくくなるとされています。
朝起きたときに体の一部が重い、同じ場所がいつも痛むという場合、寝返りの打ちやすさが関わっている可能性があります。
体の使い方については 腰や肩の重さと、体の使い方 もあわせてご覧ください。
体温の変化と眠気
眠気には、体温の変化が関わっているとされています。
体の内部の温度は一日のなかで変動しており、夜になると下がっていくと説明されています。この下がる過程で眠気が生じるという見方が知られています。
入浴後しばらくして眠くなるのは、いったん上がった体温が下がっていく局面にあたるためと説明されることがあります。
逆に、寝る直前に体を強く温めたり、激しく動かしたりすると、この流れが妨げられることがあるとも言われます。
光と体内時計
体には、およそ一日の周期でリズムをつくる仕組みがあるとされています。
このリズムは光の影響を受けます。朝に光を浴びるとリズムが整いやすく、夜に強い光を浴びると後ろにずれやすいという関係が知られています。
画面から出る光もこれに含まれると考えられており、就寝前の使用については多くの指摘があります。
体内時計と自律神経については ストレスと自律神経を整える習慣 で詳しく扱っています。
カフェイン・アルコールについて
日常のなかで睡眠に関わる要素として、よく挙げられるのがこの二つです。
カフェイン
カフェインには眠気を抑える働きがあるとされ、その影響は摂取後しばらく続くと説明されています。影響が続く時間には個人差が大きいとも言われます。
夕方以降のコーヒーやお茶が気になる場合は、時間帯を早めるという方法があります。
アルコール
アルコールは寝つきを早めるように感じられることがありますが、その後の眠りの深さには別の影響があるとされています。夜間に目が覚めやすくなるという指摘もあります。
眠るための手段として用いることは勧められていません。
寝室の環境
環境の条件も、眠りに関わるとされています。
- 温度——暑すぎても寒すぎても目が覚めやすくなる
- 湿度——乾燥すると喉や鼻に影響が出ることがある
- 光——わずかな光でも影響を受ける人がいる
- 音——一定の音より、突発的な音のほうが影響が大きいとされる
- 寝具——寝返りの打ちやすさが関わる
季節によって条件は変わります。同じ設定のまま年間を通すより、時期ごとに調整するほうが実際的と言われます。
なお、どの寝具がよいかを一般論で決めることはできません。体格も寝方も人によって違うためです。
「何時間眠ればよいか」について

よく聞かれる問いですが、単一の答えはないとされています。
必要な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても変わると説明されています。一般に、加齢とともに必要な時間は短くなる傾向があるとも言われます。
数字を目標にすると、「足りていない」という不安が生まれ、それ自体が眠りを妨げることがあります。
判断の手がかり
時間より参考になるとされるのは、日中の状態です。
- 日中に強い眠気があるか
- 集中が続かない状態が続いていないか
- 休日に極端に長く眠ってしまわないか
こうした点に問題がなければ、時間の数字そのものにこだわる必要は薄いという見方があります。
眠れない夜にできること、できないこと
眠ろうとするほど眠れない——という経験は、多くの人が持っています。
眠りは意志で始められるものではないとされています。「眠らなければ」と考えることが緊張を生み、かえって遠ざかるという循環が指摘されています。
こうした場合に紹介されることが多いのは、次のような考え方です。
- 眠れないまま寝床にとどまり続けない
- いったん寝床を離れて、静かに過ごす
- 時計を何度も見ない
- 明るい光を浴びない
- 翌朝はいつもの時刻に起きる
最後の点は、リズムを崩さないための考え方とされています。眠れなかった翌朝に長く寝ると、その夜の眠りにも影響が及ぶという説明です。
眠りの前の時間
眠りは、寝床に入った瞬間から始まるわけではありません。
体が休む方向へ切り替わるには、ある程度の時間が必要とされています。直前まで頭を使っていた状態から、すぐに切り替えることは難しいという説明です。
切り替えのための時間をつくる
就寝前の一定時間を、負荷の少ない過ごし方に充てるという方法が紹介されています。
- 照明を落とす
- 画面から離れる
- 翌日の心配ごとを書き出して、いったん手放す
- ぬるめの入浴
- 同じ手順を毎晩繰り返す
最後の点は、内容そのものより「これをすると眠る時間だ」という合図になることに意味があると言われます。子どもの寝かしつけで手順を決めることが多いのも、同じ理由と説明されます。
考えごとが止まらないとき
横になると気になることが浮かんでくる——という状態はよく聞かれます。
紹介されることが多いのは、考えを頭のなかに留めないという方法です。紙に書き出す、明日やることとして記録しておく。覚えておこうとする負担が減るためと説明されています。
それでも眠れない場合、寝床にとどまり続けるより、いったん離れるほうがよいとされています。
季節と眠り
季節によって、眠りの条件は変わります。
夏は気温と湿度が高く、体温が下がりにくくなるとされています。冷房の使い方、寝具の素材、就寝前の入浴の時刻などが関わってきます。
冬は室温が低く、体が緊張しやすくなります。一方で暖房による乾燥も起きやすくなります。
また、日照時間が季節によって変わることは、リズムにも関わると考えられています。
日照については 日光・ビタミンDとカルシウムの関係 をご覧ください。
受診を考えたい場合
生活習慣の工夫でどうにかなる範囲と、そうでない範囲があります。
次のような場合は、様子を見るのではなく医療機関にご相談ください。
- 眠れない状態が続いている
- 日中に強い眠気があり、生活に支障がある
- 夜間に何度も目が覚める状態が続いている
- いびきや呼吸の状態を家族に指摘された
- 眠っているあいだの体の動きを指摘された
- 朝の頭の重さが続いている
- 気分の落ち込みをともなう
- 服薬を始めてから眠りが変わった
このページの内容は、こうした場合の代わりになるものではありません。
通院中の方、服薬中の方は、睡眠について主治医にご相談ください。市販の製品を自己判断で使う前に、まず相談されることをおすすめします。
栄養の側

食事と睡眠の関係については、さまざまなことが言われています。
ここではっきりさせておきたいのは、カルシウムを摂ると眠れるようになる、という関係は確認されていないという点です。
カルシウムやマグネシウムが神経の働きに関わることは事実です。しかし、血液中の濃度は厳密に調節されており、食事の量がそのまま眠りに反映されるわけではありません。
この点については カルシウムイオンの基礎知識 で扱っています。
栄養の役割は、眠りを操作することではなく、体の働きが滞らない状態を保つことにあります。
厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」によると、日本人のカルシウム摂取量は1日平均486mg(男性496mg、女性477mg)で、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が示す推奨量(成人男性700〜800mg、成人女性600〜650mg)を下回っている状態が続いています。
出典:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」/「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
食べる時間
就寝の直前に多く食べると、消化の働きが進むあいだに眠ることになります。これが眠りに影響しうるという指摘があります。
一方、空腹すぎても眠りにくいと言われます。夕食が早い日は、軽く何かを口にするという方法も紹介されています。
年代によって、変わること
成長期
成長に関わるホルモンは睡眠中に多く分泌されるとされています。この時期は必要な睡眠時間も長く、生活が忙しくなるほど確保が難しくなります。
子どもの成長とカルシウム もあわせてご覧ください。
20〜40代
生活の都合で睡眠時間が削られやすい年代です。平日に不足し、休日に長く眠るという形が続くと、リズムが崩れやすくなると指摘されています。
50代以降
眠りが浅くなった、早く目が覚めるようになったという変化を感じる人が増える年代です。加齢にともなう変化として説明されることが多く、それ自体が異常とは限りません。
ただし、日中の生活に支障がある場合は、年齢のせいと片づけずに医療機関にご相談ください。
よくある質問
寝る前のスマートフォンはやめたほうがいいですか
画面から出る光が体内時計に影響しうるという指摘があります。ただし光だけでなく、内容によって頭が働いてしまうという面もあります。時間を決める、寝室に持ち込まないといった方法が紹介されています。
昼寝はしてもいいですか
短い昼寝は日中の眠気に対して有効とされることが多いようです。ただし長く眠ると、夜の眠りに影響しうると言われます。時刻が遅くなりすぎないほうがよいとも指摘されています。
休日に長く寝るのはよくないですか
平日との差が大きいと、リズムが崩れやすくなると指摘されています。ただし睡眠が不足している状態であれば、休むこと自体は必要です。差が大きくなりすぎない範囲で、という考え方が紹介されています。
カルシウムを摂ると眠れるようになりますか
そうした関係は確認されていません。血液中のカルシウム濃度は厳密に調節されており、食事の量がそのまま眠りに反映されるわけではないとされています。
寝酒はどうですか
アルコールは寝つきを早めるように感じられることがありますが、その後の眠りには別の影響があるとされています。眠るための手段として用いることは勧められていません。
眠れない日が続いています
生活習慣の工夫で対応しようとする前に、医療機関にご相談ください。眠れない状態が続く背景には、生活習慣以外の要因が関わっている場合があります。
まとめ
眠っているあいだ、体は休んでいるだけではありません。修復や整理といった作業が進んでいるとされています。
眠りには周期があり、深さは一晩のなかで変化します。寝返りにも役割があり、体の同じ部分に負担が集中しないよう働いていると考えられています。
眠気には体温の変化が関わり、リズムは光の影響を受けます。カフェインやアルコール、寝室の環境も条件のひとつです。
必要な睡眠時間に単一の答えはありません。数字より日中の状態が手がかりになるという見方があります。
そして、カルシウムを摂れば眠れるようになるという関係は確認されていません。栄養の役割は眠りを操作することではなく、体の働きが滞らない状態を保つことにあります。
眠れない状態が続く場合は、生活習慣の工夫を重ねる前に、医療機関にご相談ください。
眠りに関する状態が続く場合は、自己判断で対処せず医療機関にご相談ください。通院・服薬中の方は主治医にご確認ください。
